病院での待合いの時間と,家に帰って薬が効いてくる迄で,マレーシア以降
を読み終えた。
本当の孤独を知るためには,人は1人旅に出るのかもしれない。
/本当の人情を知るために,本当に愛したのは誰だったかを知る
ために,本当に会いたいのは誰なのかを自分の心に問うために
〜解説より引用〜
次は,『天使の骨』に進もう。
『熱帯感傷紀行』の前に一人旅したヨーロッパ。
その旅の匂いをかぎ分けながら,ミチルの「心の飢え」を
見つけたい。
午後からの仕事だったが,予想していた程火の粉が降りかかってこず,
隙間を縫って読んだ*1。
疲れを癒す旅になっていってるような話で,心が温かくなる。
ミチルが出会う人々の優しさや恋心に,時に冷たくかわしてしまうが,
人との関わりとその未来が見えてしまう人はいる*2。5年間で疲弊し切った姿は,私が正職員となって
エンジン全開で,同僚に追いつこう,過去の悪い噂に負けまいと必死に
「役割期待」を自分で見つけて仕事して疲れ切った時を思い出す。
包み込む父性を,母性をトオルに求めた様に,私も包まれたいと思って
いたあの日々・・・。(20:30)
読了(23:15)。
もう,最初の3冊を読んだ時のような苦しさと辛い涙は訪れなかった。
代わりに,至福の涙が,心地よく頬を伝い流れていた。
王寺ミチルの物語は,またも,余韻を残し,to be continue となった。
いや,『白い薔薇の淵まで』の塁が,ミチルの生まれ変わった姿だったの
かもしれない*3。
こんなに,短い期間に同じ著者の作品を6冊も読んだのは,何年ぶりの
ことだろう*4(涙)。
心に幾ばくかの希望の灯が浮かぶような気持ちは,久しくなかった。
阪神大震災の2月,同僚と仕事の後,職場の周囲を5km走った日々を思い出す。
「15kmマラソンに出ないか?」という言葉に,なんとなく,空返事をして
しまい,何度か走った。最初のうちは,片道の半分もいかない内に,筋肉が
張り,脇腹が痛くなり,30〜40分近くかかっていた。ある日,なんとも
いえない気持ち良さに,快調に走って,28分ぐらいだった時には,身体の
どこも痛くなかった。むしろ,心地よい解放感を味わっていた。
『深爪』『花伽藍』『白い薔薇の淵まで』と読後の「苦しみ」と「せつなさ」,
そしてとめどなく流れる涙にとまどいと同時に悔恨*5を味わっていた。
『猫背の王子』『熱帯感傷紀行』『天使の骨』を読む間に,
「せつなさ」を,「苦しみ」を,そして,涙を赦すかの様に,
自分の中で自分を内包していく心地よさを味わっている。
次は『サグラダ・ファミリア』*6が私を待っている。
*1:高校の頃,餓鬼の様に勉強してるフリをして,メグレ警視シリーズを,クローニンを読んだ日を思い出す
*2:「先の見えすぎお先真っ暗」という諺もあるが,これにとっつかまるとなかなか抜け出すのはムズカシイ。でも,フッと切れるんですよねぇ,これが。
*3:でも,にわか愛読者としても続続編を読みたい気持ちに変わりがない
*4:当然,コミック・コミック文庫は除く
*5:何に対してかまったくわからないが,ここではこの言葉以外に思い浮かばないのだ
*6:『天使の骨』のセビリアでペシミズムに襲われたミチルがレストランで見た,深刻な家族問題を話し合っているシーンが私の心にはヒントの様に連想されるが,裏切られることを祈っている