- 作者: 中山可穂
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
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『海竜めざめる』を一時停止して,表題作を読むことにしました。
前作『ケッヘル』が評判高かったのにも関わらず,上下二冊ということで
本の世界に浸りきる余裕が無くほったらかしにしてありました。
中・短編集『サイゴン・タンゴ・カフェ』の表題作「サイゴン・タンゴ・カフェ」は,
『ケッヘル』以前の中山の世界観を,かなり読みやすくした作品だというのが最初に感じた
ことです。
中山可穂の作品で文庫で入手できるものを,個人的偏見で分けてみると
(1)『猫背の王子』『天使の骨』『白い薔薇の淵まで』(集英社文庫)
(2)『感情教育』『マラケシュ心中』(講談社文庫)
(3)『サグラダ・ファミリア』『深爪』『花伽藍』(新潮文庫)
(4)『ジゴロ』『弱法師』(集英社文庫)
という感じに落ち着くかなと思ってます*2。
(1)”完膚無きまで”と表現したくなる作品
(2)”徹底した”作品
(3)”性別・世代を越えた作品
(4)(3)を踏まえて発展した作品
と勝手に解釈してしまいます。
さて,表題作を読んでの大きな感想は,
”濃厚な愛と幸福を予感させるエンディングの余韻”です。
あえて分類する必要はありませんが,「作家と編集者の愛」という部分は
短編なのにも関わらず,(1)の雰囲気をそこかしこに感じました。
(1)の頃の作者なら徹底して書き連こんでいたのかもしれません。
”切なく胸を掻きむしる様な思い”で読んだ3冊が懐かしく思えます。
が,私には,あの苦しさに再度挑むエネルギーはもはやありません(苦笑)。
そういう意味では,(1)のイメージを懐かしみつつ,(3)の3冊の底に流れる
優しさに微笑み,(4)の2冊にあるエンターティンメントにニヤリと
いう贅沢な一作だと思います。
この作品を堪能してしまったのか,
他の短編にも取りかかろうという意欲はまだ湧いてきません*3。
『弱法師』を読みたいなぁと思っています。
そのあとで『ケッヘル』が読めたらいいなぁと。
*1:http://d.hatena.ne.jp/dekoponn/20080409#1207712340
*2:”今の私はこう分けるでしょう”ぐらいの軽いものです
*3:案外,読まないのかもしれません。