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『サグラダ・ファミリア〔聖家族〕』

 

サグラダ・ファミリア 聖家族 (新潮文庫)

サグラダ・ファミリア 聖家族 (新潮文庫)

 シングルマザーとなったかっての恋人の忘れ形見,幼い桐人を巡って,
 ピアニスト響子が,過去と現在の想いをすり合わせていく。
 子ども嫌いの響子が美容師の”照ちゃん”と偽装結婚をしてまで,
 桐人を思う様は,”家族を持つ”とはどういうことかを考えさせてくれる。
 桐人の存在は,
  響子には,透子への切れない想いであり,
  照るちゃんには,透子の相手への想いである。
 直接的な恋愛ではなく,”桐人を守り育てる”ことで,
 二人はそれぞれの恋愛を成就させることを願うのである。
 テレビドラマで描かれる薄っぺらな他人家族ではなく,
 迫力と危うさが同居する姿を
 響子と照るちゃんとの口喧嘩に感じ取ることができる。

 この作品が,『猫背の王子』『天使の骨』に続く3作目というのを
 巻末の解説を読んで知って,柔軟なスタイルに驚いた*1
 
 解説を書いているのが冒険小説の評論家,北上次郎氏なので驚いた。
 『感情小説』からの引用・指摘の巧みさも冒険小説の評を読むようで面白かった。
 考えてみれば,
 冒険小説と恋愛小説は,よく似ているのかもしれない。
 

 [rakuten:book:12469204:detail]
 4冊続いた”中山可穂参り”,一段落しそう。
 しばらく,本から離れるかな?いや,いや・・・。

*1:以前,読んだ時はどうだったのだろう?