magurit’s blog

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『感情教育』

 

感情教育 (講談社文庫)

感情教育 (講談社文庫)

  二人の魂が溶融するまでを物語っている。
  その為に,二人の辛い過去が丁寧に語られていく。
  「これは,伝記小説なのか?」と思うほど,丹念に描かれている。
  第1章で,1人の女性の生い立ちから結婚・子育てまでが語られる。
  第2章,もう一人の女性の生い立ちが語られ,章末で,二人が出会う。
  そして,第3章は,二人の恋情,子どもを巡る確執,そして,根を探る旅。
  子どもと恋人を天秤に載せることを迫られて,選ぶことに戸惑い,苦しむ那智
  理想は,”二人”なのだが,その理想に一歩でも近づくために妥協を厭わない瑠璃。
  那智の連れ合いと彼の親の姿は,当たり前過ぎる程,現実的で厳しい。
  
 『白い薔薇の淵まで』よりも前に書かれた作品と知って,
 驚きと同時に,激情型の恋愛小説から静穏な恋愛小説への変化,
 その大胆な試みに感心した。
  ”恋愛小説”は,この人以外には書けないのではないか。
 
 まだ,中山可穂が続きそうな・・・。