- 作者: 中山可穂
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/15
- メディア: 文庫
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その為に,二人の辛い過去が丁寧に語られていく。
「これは,伝記小説なのか?」と思うほど,丹念に描かれている。
第1章で,1人の女性の生い立ちから結婚・子育てまでが語られる。
第2章,もう一人の女性の生い立ちが語られ,章末で,二人が出会う。
そして,第3章は,二人の恋情,子どもを巡る確執,そして,根を探る旅。
子どもと恋人を天秤に載せることを迫られて,選ぶことに戸惑い,苦しむ那智。
理想は,”二人”なのだが,その理想に一歩でも近づくために妥協を厭わない瑠璃。
那智の連れ合いと彼の親の姿は,当たり前過ぎる程,現実的で厳しい。
『白い薔薇の淵まで』よりも前に書かれた作品と知って,
驚きと同時に,激情型の恋愛小説から静穏な恋愛小説への変化,
その大胆な試みに感心した。
”恋愛小説”は,この人以外には書けないのではないか。
まだ,中山可穂が続きそうな・・・。