「どんでん返しとは,こういう展開をいうのだ」という見本
- 作者: C.トーマス,竹内泰之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1986/02
- メディア: 文庫
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読み返していて,当時,クレイグ・
トーマスの評価がなかなか高いことに
気づきました。クリント・イーストウ
ッドが主演した映画『ファイア・フォックス』を見て原作を読み,
続編の『ファイア・フォックス・ダウン』,同じパイロット,ガントが
登場する『ウィンター・ホーク』と楽しんでいった。
その後,クレイグ・トーマスの既発売本を集めていった。
さて,『狼殺し』ですが,『深海のYrr』の頃の文庫は文字が小さいのか
長く読むことが出来ない年齢であることを痛感させられました。
時間がかかりました。通勤の車中がメイン読書時間なのですが,
最近は,暑さのためか,帰宅時,グッスリと眠ってしまいます。
重厚な文章と設定が久々に冒険小説の醍醐味を味わせてくれました。
”復讐抄”がメインですが,ラスト辺りの”どんでん返し”的結末は秀逸です。
以下,超粗筋にてネタバレも・・・。
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第二次大戦中,レジスタンス活動に協力していたSISのガードナー。
ある作戦でレジスタンスの一人を暗殺する作戦を”自然”な流れに見せるため,
ガードナーまでも命を狙われ囚われ,拷問を受けてしまう。ユダヤ人キャンプに
送られる列車から逃走し,地下組織に救われるが,イギリスに戻るすがら,彼を
裏切ったレジスタンスチームに暗殺されそうになる。これがトラウマとなった
ガードナーだが,その事実を心の奥底に埋葬して20年を過ごしてきた。
家族を連れて避暑にきたガードナーは,彼を裏切った男に偶然,避暑地で出会っ
てしまう。その男は,ガードナーが自分を追って来たと思いこみ,抹殺にかかろう
とする。ガードナーも強烈なフラッシュバックの末,男を思いだし,正当防衛の末,
殺してしまう。妻も家族も捨て,彼の復讐抄が始まる。かつての上司二人が,ガー
ドナーの行く末を案じる中,何者かの意志がガードナーの復讐を助けていく。
そして,ラスト辺りで,真相が・・・。二人の上司,ラティマーとオーブリー,
トーマスの作品に何度も登場する,が真の敵に気づき,復讐という名を借りて,
ガードナーに全てを託すのだった。
冒険小説における主人公の拘りと成長がジックリと書き込まれた『狼殺し』。
『ナバロンの要塞』や『鷲は舞い降りた』などの派手な作品よりは,格段に地味で
重たい内容の『狼殺し』。先に矢口敦子『償い』について”ドンデン返し”の不出
来を指摘したが,この作品におけるドンデン返しこそ,読んでいてカタルシスを覚
えるものだとここで言い切ってしまいたい。