magurit’s blog

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トランスな世界

No.11

●投稿者:マグリット(♂)
●投稿日:04月24日(水)23時55分39秒

◆ルネとの出会い
私がルネと出会ったのは,デパートのギャラリーだったか。中学生の私には,
そのなんとも言えない不条理な世界は魅惑的に見えた。中でも「光と闇の帝国」
という作品には,切なさと興奮を覚えたのを今でもはっきりと思い出す。絵の
上半分は,晴天の世界だが,絵の下半分は雨の夕暮れを表している。舗道は濡
れて黒くなり,街灯が寂しさを増しているように感じた。これに似た映像を見
たような記憶がずっと,私の心の端にゴミのようにまとわりついていた。
 最近それが何かなんとなく,わかった。外国映画の暗い世界のシーンだ。登
場人物は,明かりを持ってうろうろしているが,その明かりが必要無いほど,
見ている画面は,明るいのだ。映画を見ている側からすると,「そんなに明る
いところで,灯りを持って何が見えないのだろう?」と変にしらけてしまう。

 話をルネに戻そう。ルネの絵に出会った頃,エッシャー安野光雅和田誠
に出会った。彼らの描く不条理は,何の不満もなく均一に生きることに違和感
を持つ若い心に衝撃を与えたのだ。

 ルネ・マグリットという作家にきちんと対面したのは,それから何年も後だ
った。そこに,黒いシルクハットを持った謎の男に愛着を感じた。星新一のシ
ョートショートに「N氏」なる人物がよく登場するように彼も作品によく登場
していた。そこに愛着を感じたのかもしれない。
 手塚治虫の作品に出てくる「ヒョウタンツギ」のような狂言回し的役目を私
エスプリの効いたアクセントとして,心地よく感じる。