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小学校低学年の頃読んだ『幸福な王子』*1を思い出しました。
7,8才でしたが,とても胸が詰まりました。
南の国に渡らないといけないツバメの切迫感。
王子の見た哀しみ,”なんとかしてあげたい”という気持ち。
でも,王子は動くことが出来ないのです。
代わりに,翼のあるツバメに頼むのです。
しかし,ツバメには時間がありません。
ツバメはとことん突っぱねる選択もできたのに・・・。
ところが,ツバメは,”一度だけ”,”あと一度だけ”と頼みを聞いていきます。
何度も「もう止めて南の国に行きなさい」と祈りました。
そして,抜き差しならない状態に・・・。
渡り鳥のツバメは越冬はできませんから命を懸けた善行です。
”命を捧げるという行為”の重さはずっしりと胸に迫ってきました。
銅像の王子は金箔や宝石が無くなりみすぼらしくなっていきました。
私財をなげうって貧しい人々を救おうとしたのです。
その後,貧しかった人々がどうなったのかは分かりません。
銅像を融かして別の像を作ろうとする役人の話からすると,
きっと,一時しのぎにしかならなかったようにも思えます。
それよりも,突然の金箔や宝石です。
それをお金に変えようとしたら,盗んだとか思われないのだろうか?と
心配にもなりました。
ツバメが死を悟った時,彼は王子に別れを告げに行きました。
最後の力を振り絞って王子の処まで飛んでも,まもなく死ぬのです。
もう未来は無いのです。王子の無理を聴いたばかりに,死ななくてはならないのです。
「誰かが行かなくてはならないから」と壊れた原子炉へ行かなければならないとしたら,
それがたとえ,愛する者の為でも,本当に出来るのか・・・。
王子への挨拶と共に命の灯は消えました。
その時を察した王子の鉛の心臓も張り裂けたのです。
善意とはいえ,自分の我が儘の為に,死ななくても良いツバメが
命を失ったことに懺悔の思いが起こったのか,それとも・・・。
ゴミ箱に捨てられた,残った王子の心臓とツバメの亡骸。
実に残酷な風景です。
それを救うことが出来るのは,本当に神様しかいないのでしょうか?
いえ,神様とて死んでから,「(誰かが)ちゃんと見ている」ことを伝えられただけです。
死んで,天国で飛び回るというのはそんなに素晴らしいことなのでしょうか?
貧しい人々を見て哀しんだ王子が,天国で何をして幸せを感じたのでしょうか?
天国では,残された貧しい人々の事は忘れてしまったのでしょうか?
天国では,生前,善行を行なっていれば,現世の憂いを忘れていい場所なのでしょうか?
お話です。童話です。
全てではありませんが,でも,子供心に思ったのです。
今,感じていることは,
「他人に頼まれたら嫌と言いにくい人」には,実に辛いお話です。
死なないだけ,シドニー・ポアチエの『野のユリ』の方がいいかもしれません。
彼は,途中,何度も逃げだし,逃げ出しては戻り,教会を建てました。
ツバメや王子の様に,善行を積んでも死ぬ人は出てきません。
現実的にはどうすればいいか,どうできるかを
少々押しつけがましいかもしれませんが,
与えられる側と与える側が交互に入れ替わりながら描かれているので。
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