「出版業界」の巻
”二者択一的タイトルの書籍が数多く,そして売れているわけ”
「自由」が逆に二者択一の回答を求めている
二者択一的タイトルが受ける背景を,法政大学社会学部教授の稲増龍夫さんはこう話す。
「一言でいえば,世の中が混沌としているからです。例えば,高度経済成長の時代には『勉強
して良い学校に入って,良い会社に入る』というのが主流,それ以外は反主流,というところ
がハッキリしていました。ところが価値は多様化し,今では『あなたの好きなようにしなさい』
という親が大半です。すると自由になってしまい,何か指針を求めるようになります。そこで
二者択一的な書籍スタイルが受けるわけです。
自分の選択の自由は誰もが保証されたいと思っています。自分の自由が侵害されることになれ
ば,抵抗するでしょう。しかし,それは自分がこだわる領域に限られます。自分が興味のない分
野では,『白黒はっきりしてもらいたい』ということなのです。こうした発想は危険といえば危
険ですが,これは自由と豊かさの代償だとも言えます。
二者択一的な回答を求めてしまう人が増加するのは危険な兆候だと,静岡県立大学助教授の西
田公昭さんは指摘する。
「人間はあいまいな状況を嫌う傾向があります。あいまいな状況が2つのタイプの感情をつくり
出す。ある人は,イライラし攻撃的になる。もうひとつのタイプは不安になり,どっちが正し
いのか,このままでいいのかと不安にあんる。一般的にこの2つの傾向を避けようとして単純
な選択肢を求めようとする。ファシズムの研究によれば,こういうあいまいさを嫌う思考の人
はファシズムにつながるといいます。ファシズムというのはあいまいなものをなくそうとする。
つまり権威主義なわけです。」
「日本社会は,非常に単純化した思考が続いてきて今に至ったと思います。オウムの問題が起こ
ったり,自己啓発セミナーがはやったり,答えが見つからない時代になり,より単純化した答
えを求める社会になってきているといえるでしょう。まさにヨーロッパのファシズムが台頭し
てきた時代と似ているように思われてなりません」
ファシズムという権威主義には特徴的な言動パターンがあるという。
「権威に弱く服従し,弱者に対して攻撃する。またステレオタイプ的な発想をする特徴があり
ます。画一的に敵か味方かという2極分化的な考え方を特徴的に持つといいます」
小泉前首相が在任中の5年間,国民の前で見せた言動に似てはいないか*1・・・。
「自由が逆に二者択一の回答を求めている」『ダカーポ』593号 54〜55ぺ,編集引用。
*1:我が職場の管理職3名の言動・行動と全く同じだ。先が見えすぎて,お先真っ暗だ:泣