magurit’s blog

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『スターシップ -叛乱-』は愉快痛快

 

スターシップ―反乱 (ハヤカワ文庫SF)

スターシップ―反乱 (ハヤカワ文庫SF)

 「スタートレック」を観たせいでもないだろうが,何気なくパラパラと捲っていた。
 『「(会話)」が結構多いなぁ。ライトノベル風かなぁ。
  でも,面白そう,コール中佐の台詞がいいねぇ。
  誰の作品,えぇっ!レズニック?

これ,本当にレズニック?』

  「マスコミは真実よりも,嘘やあいまいな中傷を利用する」と,コール。
  「そして飽きられたら,それを訂正する。中傷された相手が文句を言い続けると
   ”訂正したのに,どうしてブツブツ言うんだ?”と思うのさ」
  「モラリアのマスコミより腐ってるみたいだな」
  「これが,ものの道理だ。弁護士は正義に燃えて仕事を始めるが,結局は訴訟に
   勝つことが大事になる。患者を救いたいと願っていた医者は自分の資産を守る
   ことが大切になり,真実を追い求めていた記者は,売上げ部数を上げようと
   必死になる」                   324頁より引用

ギョエーッ!!

  レズニックって,日本贔屓なの?浪速の苦境を知ってるの?

 久々にスラスラ読めるSFと出会った感じ。
 続編があるなら,是非に読みたい。
 レズニックとの初対面は『ソウルイーターを追え』*1
 (相前後して掘晃『漂着物体X』を読んだ記憶)
 邦題からして,ヴァン・ヴォークトの『宇宙船ビーグル号の冒険』のような,
 ハラハラドキドキ*2を予想していた。
 エンディングがハッピーでは無かった気がする。
 そして,薄い(『スターシップ』と比べて)文庫なのに,結構時間がかかった。
 当時,SFへのイメージが,素人が抱く”センス・オブ・ワンダー”レベルだったのだろう。
 その後,『暗殺者の惑星』は読んだがアラスジは,まったく思い出せない。
 『アイヴォリー』,『一角獣をさがせ!』辺りまでは積んだ覚えがある。
 『アイヴォリー』『キリンガヤ』等は,表紙からアフリカのイメージしか湧かないのだ。
 面白そうだが,読むのに躊躇する作家として,マイク・レズニックの名前が刻まれた。
 
 『スターシップ -叛乱-』という邦題から
 「ST*3ネクストジェネレーション」の映画『叛乱』が
 最初に浮かんだが,全く関係ない。

 主人公,ウィルソン・コール中佐は独断専行で武勲を重ねる銀河の英雄。
 といっても,スペオペのマッチョなヒーローではなく,頭脳で闘うタイプ。
 カーク船長とは,かなりちがうのです。
 独断専行過ぎて,辺境宇宙をパトロールする「セオドア・ルーズベルト(テディ・R)」号へと
 左遷させられてしまう。ここから物語が始まる。

 2mを越える巨体のフジヤマ艦長*4,オレンジと紫の縞模様,食事の口は背中側にある
 ポロノイ人のポドク第一副長,そして,盟友のモラリア人フォリス中佐,個性的な
 面々が揃っている。そして,女性クルーが・・・多い。

 航宙軍で不服従とか反抗といった人間関係の問題を起こしたエリートを
 戦闘が起こらない退屈な辺境へと追いやることで,
 戦場で敵以外の問題を排除することにした軍首脳。

 銀河の英雄の到着に,上官二人を除いて,クルー達は色めき立つ。
 着任早々,当直仕官として割り当てられた時間帯に,何週間ぶりかのデータを更新させ,
 レーダーで敵を発見し,上官に報告しないまま敵艦に近づき,
 シャトルに二人を乗せて・・・。

 無手勝流で飛びつきながら,「答えの無い問題はない」と対策を捻りだす。
 ご都合主義が鼻につく作品も多いSFだが,それを感じさせないのがいい。
 敵から逃亡し,街を走り回るのだが,マスコミに情報をリークし,
 マスコミが騒ぐことから,必然的に軍に自分を救出させる件は,
 謀略スパイ物のようで,でも暗くないし,実にテンポがいい。
 宙賊となったコール,ハーロックと共闘して宇宙で暴れて欲しい。

そう,テンポの良さがこの作品の特徴だろう。

ああ 愉快痛快 奇々怪々の〈テディ・R号〉

 

ソウルイーターを追え (新潮文庫)

ソウルイーターを追え (新潮文庫)

 
漂着物体X (FUTABA NOVELS)

漂着物体X (FUTABA NOVELS)

*1:2000年発行ではない,最初の新潮文庫

*2:「エイリアン」の元ネタとも言われる?

*3:スタートレック

*4:戦闘で家族を亡くして,失望の果て,ことなかれで職務をこなしていたが,コールのおかげ?で士官として目覚めてしまう。ちょっと『新宿鮫』の桃井を思わせる