magurit’s blog

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トランスな世界

No.169

 ●投稿者:マグリット(♂)
 ●投稿日:01月07日(火)01時59分00秒

◆チョウの血液

 それでは,問題5の答えです。

 チョウの血液

 チョウは細いからだとうすっぺらいハネで,カブトムシに
ぜんぜん似ていません。けれどもやはりカブトムシと同じよ
うに血液が流れていて,それはほとんど無色透明です。

 チョウはさなぎから出ると,まだしわくちゃのハネに血液
を送り込んで,ぴーんとハネをのばします。チョウのハネは
薄っぺらですが,体の一部であり,ちゃんと血液が流れてい
るのです。

 では,酸素はどうでしょう。これはカブトムシと同じで,
血液に酸素はふくまれていないのです。「血液は酸素を運
ぶ」という考えは,人間には使えますが,チョウやカブト
ムシには使えないのです。

 血液に酸素がないとすると・・・

 カブトムシやチョウの体も細胞でできています。そして,
体中の細胞には酸素が必要です。しかし,カブトムシやチ
ョウの血液には酸素が入っていません。血液から酸素を吸
うことはできないのです。

 みなさんの中にはこれを聞いて「それじゃ,おなかの気
門からすいこんだ空気(酸素)は,どこに行っちゃうんだ
ろう。血液にとけこまないなんて」と思った人もいるでし
ょう。いったいカブトムシの体の中はどうなっているので
しょうか。

No.170

 ●投稿者:マグリット(♂)
 ●投稿日:01月07日(火)02時31分30秒

◆毛細気管の話

 もう少しだけ,おつきあいください。

 毛細気管の話

 私たち人間は,空気中の酸素を肺で血液の中にとかしこん
で細胞へ送りとどけています。

 しかし,ときには細胞が酸素をほしがっているのに,血液
の酸素が間に合わないこともあります。すると細胞は酸素を
すえなくて苦しんでしまいます。

 そんなとき,人間のからだの中にある1コ1コの細胞が,
直接口をあけて外の空気を吸いに行けたらずいぶん楽でしょ
う。残念ながら体の中にいる細胞は外に飛び出してくるとい
うわけにはいきません。そのために人間は,血液という酸素
を多くとかしこめる液体を,身体中にぐるぐるまわして,細
胞1匹1匹に酸素を送りとどけているのです。

 けれどもいくらヒトの血液が特別に酸素と良くとかすと言
っても,やはり液体にとける酸素の量には限度があります。
ですから本当は,体の中の細胞が直接口をあけて外の空気を
すうことができたら,細胞にとって一番楽にたくさんの酸素
が吸えるのです。

 ちょっと想像してみてください。

もし,あなたの体中の細胞が「体の外にストローをのばし
て空気を吸いたい」なんてことになったら,体中ストローだ
らけ,骨も筋肉も脳もどこもみんな空気が通ってスカスカに
なってしまうでしょう。

 ところが,そんなふうに細胞1コ1コが空気を吸っている
という信じられない生物がいます。

それが,カブトムシやチョウなのです。
  
 実はおなかの気門の穴は,肺になっているのではなく,細
い細い,目に見えないくらい細い管になって,体中の細胞に
つながっているのです。空気が体中の数十億個の細胞に流れ
こんでいるのです。体の中を風が吹いていると言っても良い
でしょう。

 昆虫は,気管を徹底的に使っている虫です。その利点は,
第1に,体が軽くなったことです(カブトムシは体の割に
軽く,水に浮いてしまいます)。そして筋肉の細胞にどん
どん空気を送れるので,酸素不足になりにくく,筋肉は疲
れません。地球で一番最初に空を飛んだ生物は,昆虫類な
のです。それは今から4億年ほども昔のことです。

 第2に,水が無くても酸素を細胞に送ることができるこ
とです。そこで,昆虫は乾燥に強く,砂漠のようなきびし
い環境にも住むことができるのです。

 オワリ。

新年早々,生物学の問題にお付き合いありがとうございました。
問題5の後もあるのですが,さらに専門的な話となるので,
省略版で紹介させていただきました。この原案は,小学校(高)
〜大学生・大人までを対象とした授業プランだそうです。
 ここでは,私が驚いた「チョウやセミの羽化の時に,くしゃく
しゃのハネがピンと張るのは,血液が流れていくから」という
部分がヤマになるように,お知らせしたくて,連載しました。

そして,「科学はワンパターン」(つまり,「馬鹿の一つ覚え」
が大事であること)をお知らせできたらと思ったのです。

 また,感想等ありましたら,書き込みをお願いします。
 
 正月は,「大風呂敷」を拡げる時ですので,こういう形式も
ご容赦ください。

 また,面白い事がありましたら,同様の方法で,書き込んで
ください。

どうも,ご静聴(笑)ありがとうございました。