magurit’s blog

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中山可穂はどうして,こんなに切ない・・・

 

白い薔薇の淵まで (集英社文庫)

白い薔薇の淵まで (集英社文庫)

 先の木曜日,疲労性の咽頭炎*1で休んだ日の午後,頭の上にあった
この本を読むことにした。

 なんと,切ない愛だろう。
 なんと,苦しい愛だろう。

  同性愛者だからといって右手の中指をあからさまに見つめるような人間には,
 塁の話はしたくない。わたしたちは結局のところ,同性愛者にはなりきれなか
 ったのだ。そのように生きられたらどんなによかっただろう。わたしたちは何
 者にもなりきれなかったのだ。
  塁が男だったらとか,自分が女でなければとか,思ったことは一度もなかっ
 た。わたしは自分の性を肯定するように塁の性も受け入れ,愛した。性別とは
 どのみち帽子のリボンのようなものだ。意味などない。リボンの色にこだわっ
 て帽子そのものの魅力に気がつかないふりをするのは馬鹿げている。自分の頭
 にぴったり合う帽子を見つけるのは,実はとても難しいことなのだ。東京じゅ
 うの帽子屋を探して歩いてみるといい。百個に一個あるかどうかだ。だから,
 これだと思う帽子が見つかったときは,迷わず買ってしまったほうがいいのだ。
 肝心なのは宇宙の果てで迷子になったとき,誰と交信したいかということだ。
                   『白い薔薇の淵まで』9頁より引用

 引用文から,男性用AVの様な,卑猥な想像を勝手にされる方もおられる
 だろうが,純文学である。そういったシーンを,微に入り細に入りの説明
 をしなくとも雰囲気のある文章で空気を伝えてくれるので,嫌らしさなど
 微塵も感じない。いや,それだけに,哀しさや切なさが募ってくる。

 どうして,中山可穂氏は,いつもこんな終わり方をするのだろう。
 とめどなく流れる涙に,いつのまにか,もう一度,最初から読み始めて
 いた。ビデオテープを見ながら,結末が分かっているから,主人公に
 「だめよ,そんなこと言ったら。早く連れ戻して・・・」と思わず,
 無意味なツッコミを入れそうになる。

 その後,今日も併せて,2回(都合4回)読み返した。
 こんな短い期間に4回も読んだ経験は私にもない。
 そこまで,感情移入してしまった。

 今夜も涙なく眠ることはできないだろう。

 この日記を見て,メールをくれた方が,
 「秋に中山可穂は,切ないですよね。涙が止まらないでしょ。
  私も風邪で寝込んでいます」と書いてくれた。

 珍しく,眠る時間を削って,小説を読む日が増えている。逃避かな。

 次に読む本は,川上弘美氏のホンノリ感に包まれたくなるだろう。
 そして,また,中山可穂氏の切ない涙を求める。
 
 当分,これを繰り返しそうな予感がする。
 

 
   ↑
 「少し眠たいなぁ。でも,ちょっと遊びたいの。レオン〜〜」
 (レオンはチェサンのパパ)

*1:私は疲労が蓄積すると,喉が炎症を起こして風邪のような症状に悩まされる。熱は出るわ,腰がダルイわで・・・。喉の炎症が疲労によるものであると気づくまで,風邪薬が効かずに困っていた。ある時,かかりつけの医者に,喉用の風邪薬に含まれている消炎剤「塩化リゾチーム」を処方してもらい,仕事のスケジュールがハードな時に予防対策として飲むことにした。これが見事に当たり!?,私はここのところ喉の炎症は出てなかったが・・・。