暑いので,蕎麦を茹でることにした。
鍋にたっぷりのお湯をわかす。
パッケージには「5分茹でる」とある。
しっかりと沸騰したお湯*1に,
一束さっと入れた。
一瞬,スーッと湯が静まり,
湯が沸き返し,乾麺が踊り始める。
麺の束は,理髪店の広告模様のように
斜めに回転しながら,鍋の淵に沿って円を描く。
ゴボゴボ・グルグル・ゴボゴボ・グルグル・・・。
白い泡が段々と盛り上がる。そうして,溢れる寸前に,水を少し注ぐ*2。
シャーッと泡が静まり,麺が踊り,白い泡がまた膨らんでくる。そして,水を注ぐ。
タイマーの音で火を止め,網に中味をあける*3。
すぐに流水で冷やしながら,ヌメリを取り除いていくのです。
優しく,丁寧に,素早く網に擦りつける。
氷水を張ったボールに30秒漬け,よく水を切り*4,笊(皿)に盛りつけて完成*5。
茹でる時の心構えは,忘れられない。
「”乾麺から茹でる話”と”教条主義”」という演題で話を聴いた時,言葉の意味が分からず。
何か,カチカチに凝り固まったイメージを音の響きから感じた。
「袋に記載された作り方は,乾麺を作った人が何度も確かめた最適の条件だから,
美味しく食べるにはこれを守らないとね」と”水の量,湯の状態,時間”を厳格に
守ることを嬉しそうに話していたのが印象に残ったのだ。
科学者なり,その道の権威者が確立した条件*6は,
信頼するに値するから,それを守れば,必ず再現できる。
その後,教条主義に徹したとは言い切れないが,
文字通り,誰でもが成功するレシピを意識して仕事をしてきた。
想いを胸に,蕎麦を美味しく啜る。