1月10日の朝から1月12日の朝までの話
なのだが,人間がよく描かれたシムノン
らしい傑作。
きっと,サスペンスドラマのネタとして
採用されているんだろうな。
アラスジは以下のとおり。
ルーヴル百貨店の玩具売場主任と称するその男は,わざわざ警視
庁にメグレを訪ねてきながら,話なかばで,メグレがちょっと中座
したすきに立ち去ってしまった。妻は自分を殺そうとたくらんでい
る。妻は毒薬を多量に所持していると男は告げていったが,男の態度や素振りにもいささか
常軌を逸した点がなくもない。メグレは男のことが気になりだし,ひそかに身辺を調査しは
じめる・・・。通常の事件とは異なり,犯罪事実の無い時点から出発する奇妙な捜査・・・
男の家庭生活,隠された意図。そしてある夜,事件はついに破局的な展開を見せる・・・。
(河出書房新社 第3巻 裏表紙より引用)
登場人物*1は,
メグレと部下(ジャンヴィエ,ラポワント,リュカ,トランス),検事総長,
パルドン(メグレの親友,ピクピュス通りで医者をしている),メグレ夫人,
グザヴィエ・マルトン(ルーヴル百貨店の玩具売場主任),
ジゼール・マルトン(グザヴィエの妻,アリスの店の共同経営者)
ジェニー(ジゼールの妹。アメリカから帰ってきた未亡人)
ステーネル医師(精神科医),
アリス氏:モーリス・シュウォップ(下着店の経営者)
パリ周辺図↓
ちょうど,第一巻の冒頭の様に,”妻が私を殺そうとしている”という男の
話から始まります。メグレという有名人への畏敬の念がそうさせるのか,
日本のドラマだと,河原崎長一郎氏が演じる小心者をイメージさせるマルトン氏。
マルトン氏が帰った後に,彼の妻が夫の行状について話に訪ねてくる。
医者を志していたメグレは精神衰弱などの疾患に関する専門書を読みながらどこかに
違和感を感じていた。ラポワントの報告で,マルトン氏と義妹の間のつながり,
マルトン夫人と共同経営者との関係。手を下すのはマルトン氏か夫人か。
緊迫した中,悲劇的な結末を迎える。
マルトン氏は,妻に毒物を盛る。ただし,致死量ではなかった。彼には拳銃があるのだ。
彼を慕う義妹が夫人に毒を盛っていた。が,しかし,夫人も氏も飲み物に対して,
常に慎重,いや,疑っていた。二人の間では,配膳された器を入れ替えることが
当たり前だった。夫人はいつもの様にカップを飲む前に入れ替えた・・・。
釈放される夫人。泣き崩れる義妹。
シムノンの作品には,このやるせなさがつきまとう。
- 作者: ジョルジュシムノン,清水義範,Georges Simenon,谷亀利一
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2000/04/04
- メディア: 文庫
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*1:展開に関係ある登場人物に限定しています