11月3日(月曜)の朝,物語は始まる。
この作品の味わうべき*1部分は
定年退職の迫ったメグレの不安と寂しさ。
イヴリのガール河岸で古いのれんを細々と守るビスケット屋
《ラショーム家》の当主レオナールが,深夜,自室で胸を撃たれ
て死んだ。庭に梯子,二階の窓に梯子を立てかけた跡,割れた窓
ガラス。状況は外部からの侵入者の犯行を物語っていたが,家族
は誰も朝まで気づかなかったと主張する。いろいろ事情を聞き出
そうとするメグレにたいして,家族たちは奇妙に口をつぐんでい
る。メグレはそこにただならぬものを感じたが,はたして捜査が
進むにつれ,この一家の内部事情と複雑な人間関係が浮彫にされ
てくる・・・。
(河出書房新社 第6巻 裏表紙より引用)
登場人物*2は,
メグレ,メグレ夫人,部下(ラポワント,リュカ,トランス,ジャンヴィエ,)
ムルス(鑑識),ポール医師(検死官),修道者(プロフェッショナルな泥棒),
レオナール・ラショーム(被害者・ラショーム・ビスケットの代表),
アルマン・ラショーム(レオナールの弟),ポーレット・ラショーム(アルマンの妻),
カトリーヌ(老女中),アンジェロ予審判事,ラデル弁護士,ブレーム(会計係),
ヴェロニク・ラショーム(レオナールの妹),ジャック・サンヴァル(ヴェロニクの恋人)
若い判事,アンジェロがメグレの捜査につきまとう。
監視されているようでイラつくメグレ。
普段なら,自分が街の人々に質問することも,仕方なしに部下に命じる。
お陰で,メグレが質問する内容が,リストアップされた。
第一の質問。ラショーム家には車があるか,あるとすればどこのメーカーの車か。
第二の質問。いつもその車を運転しているのはだれか?昨夜車は使われたか?
第三の質問。ポーレット・ラショームはよく外へ夕食に出かけるのか?だれと出
かけるのか知っているか?夕食のあとで彼女がなにをしていると思うか?
第四の質問。ポーレットと夫との間はどんなだったか?念のためきみにいっておくが,
二人は寝室が別々だったのだ。
第五の質問。ポーレットと義兄との関係は?
私のいったことをみんなノートしたね?最後に,レオナール・ラショームの妻がどんな
女だったかわかればありがたい。彼女は約八年前に死んだ。彼女の結婚前の姓。彼女の
家族のこと。彼女の家族は金持ちだったのか?彼女の死因は?
(第4章)