ボルドーでの国際警察会議に出席したメグレは,帰途田舎町フォン
トネイに立寄る。そこで判事をしている学生時代の友人に会うのが目
的だった。だが彼を待ち受けていたのは連続殺人事件----最初に殺さ
れたのは町の名士(成り上がりで精神病の家系)の義兄であり,第2
の被害者は一人暮らしの老婆だった。町は不安と恐怖から日頃の対立を露呈し,異様な雰囲
気につつまれていった。パリとは勝手の違う状況に恐れをなしたメグレはすぐに立去ろうと
するが,すぐまた第3の殺人が起きてしまった----。フランスの地方社会の特異な事件にま
きこまれていくメグレを描いた異色作。
(河出書房新社 第4巻 裏表紙より引用)
登場人物*1は,
メグレ,メグレ夫人
ジュリアン・シャボ判事(メグレの旧友),シャボ夫人(ジュリアンの母),ローズ(シャボ家の女中)
ユベール・ヴェルヌー,アラン・ヴェルヌー(ユベールの息子・精神科医)
ロメル(新聞記者),フェロン警視,シャビロン刑事
ロベール・ド・クルソン(最初に殺害された男。ヴェルヌー・ド・クルソンの義兄弟)
ジボンばあさん(2番目に殺害された)
ゴビヤール(3番目に殺害された兎皮商人)
エミール・シャリュス(教師),ルイーズ・サバチ(アランの恋人)
イザベル・ヴェルヌー(ユベールの妻),リュシル(イザベルの妹),ジャンヌ(アランの妻)
旧友に会いに足をのばしたメグレが,田舎町で因習深い事件に巻き込まれる。
列車の中で,最初に話しをした男(ユベール)が最後に犯人だとわかるわけだが,
住民がヴェルヌー家に対する反感から,アランが自殺するまで,ヴェルヌー家の
誰かが犯人だと決めつけている雰囲気が実に生臭く描かれている。とはいっても,
別段,特別な表現がされるわけでなく,読んでいていつのまにかそういう空気に包まれて
いるという感じだ。これが,シムノンの描く世界なのだが・・・。
メグレは正式には事件に首を突っ込んではいない。単に地方紙がかき立てただけなのだ。
旧友のピンチを救いつつ,決して前には出ない。一人,犯人を訪ね,真相を相手に
語るシーンはメグレが”運命の修理人”と呼ばれる所以だ。
↑キンキンがメグレ(目暮),夫人:市原悦子,部下:小坂一也,パリでの恋人:佐藤友美,局長:中村敦夫
*1:展開に関係ある登場人物に限定しています