- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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書いておいたので,それが見られなくなって,何がいつ出たのかわからなくて困っていたら,
新聞に新刊紹介が載っていた。
「あぁ,そうだった」と,つれあいが仕事に帰るのを送っていった帰り道,手に入れた。
PCやら片づけやら式準備や今後の事を考えると書物など読んでいるどころではないのだが,気になるのだから仕方ない。
その分,集中してしっかり区切って読んだ。読めた。
連作短編集。 デコポンさん*2が紹介していた『ニート』を読んだのが絲山秋子との出会いだった。
『ニート』も短編集だったが,絲山の書く作品の多くは,どこにでもいそうな,いやいる,
それでいて,状況が弱者である作品が多い。弱者といっても悲惨さや救済といった話しではない。
「仕方ないでしょ」と問いかけられて,「そうだね,仕方ないね」と,一緒に,情けなく,
でも,わずかに笑みを残した顔をしてしまう様な・・・。
ジリ貧に追い込まれて行く道を,進まざるを得ない人が,何かを待ちながら,フッと肩から力が抜けて,
深海から浅海の明かりを目指して緩やかに浮かび上がる日を。
五木寛之氏の人生論とは違った,あるがままに流れの中で,他人の目におびえながら,でも。
スッと,今ある自分を仕方なくだが,決して嫌々ではない,微熱の様な気だるさと
共に生きていく事への柔らかい温もりを感じるのは私だけかもしれない。
著者の姿がオーバーラップし,これまでの作品の登場人物に重なる世界は,独特の心地よさを保証してくれる。
疲れているのに,他人の目が気になり,自分を偽りながら生きなくてはならない日常で,
「仕方ない」を受け入れたいのに受け入れられない沢山の人*3にオススメの一冊。
自分にワガママに,優しい気持ちになれます。