magurit’s blog

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『メグレと殺人者たち』

  3日前,ε年ぶりにメグレ警視シリーズ第1巻を読み始めた。
  この本を手にしたのは,2回目か3回目か。ほとんど内容は忘れていた*1

  司法警察メグレ警視のところに,ある日,見知らぬ男から電話がかかってくる。
 男は,数人の男からつけ狙われ,生命が危ないと緊迫した声で告げ,助けを要請す
 る。だが,男が自分の居場所を明かしたとたんに電話は切れる。メグレはすぐ部下
 の刑事を派遣するが,男はすでに立ち去ったあとである。夕方までに数回,男から
 電話がかかるが,いずれも話は中断される。その日の深夜,電話の主とおぼしき男
 の死体がコンコルド広場で発見される・・・。男はなにものか?犯人は誰か?被害
 者割出しから犯人逮捕まで,推理とサスペンスをリアルな筆致で描く巨匠シムノン
 の最高傑作。(河出書房新社 第一巻 裏表紙 あらすじ より引用)

 推理小説というよりは,メランコリックな(警察)小説といった作品が多い中,
 鑑識のムルスが活躍し,テンポよい捜索,推理,国際警察とのジョークが冴える格別の作品。
  男からの最初の電話の件はこうだ。

 「ちょっと待ってください・・・私は近くにいるんです・・・あなたのオフィスのまん前・・・
 さっきまでオフィスの窓が見えてましたよ・・・グラン・ゾーギュスタン河岸・・・《ボージョ
 レーの酒倉》という小さなカフェをご存知ですか・・・そこの電話室に私はたったいま入ったの
 です・・・もしもし!聞こえますか?」
  午前十一時十分。メグレは無意識に,メモ綴りの上に時間と,ついでカフェの名前を書き留めた。

 追われている男との会話は唐突に切られる。
 メグレは,午前中,ある老婦人の為に費やされることになったのでウンザリしていた。
 シムノンが単なる推理小説作家でなく,”小説家”なのだと感じるのはこんな時だ。

  メグレはためらった。街には春の香りがただよい始めていた。ビヤホール《ドフィーヌ》に
 は早くもテラスが用意されていた,局長の言葉は昼食前にゆっくりとアペリチフでもやらない
 かと誘ったものだった。
 「ここに残っていたほうがよさそうです・・・今朝,奇妙な電話があったものですから・・・」

  
    ↑死体が捨てられたコンコルド広場周辺図
  コメリオ判事との電話でのやりとりを,不安そうに見守るメグレ夫人。
  メグレは,気管支炎だと仮病を使い,家で推理を巡らす。
  殺された男のカフェが見つかり,部下夫婦にそのカフェを開けさせた。
    ↓メグレが住むリシャール-ルノワール通り,警視庁周辺図
  

 登場人物*2は,
 メグレとその部下(ムルス,リュカ,ジャンヴィエ,シュヴリエ,シュヴリエの妻),
 メグレ夫人,ポール医師,コメリオ判事,コロンバニ警視(国際警察)
 アルベール(電話をしてきた殺された男,ニーヌの夫),ニーヌ,ロワゾー
 ヴィクトール・ポリアンスキー,マリア,セルジュ・マドック,カルル,ピエトル
 ジョー,フェルディナン,マルシャン,ジャン・ブロンスキー
  

メグレと殺人者たち (河出文庫)

メグレと殺人者たち (河出文庫)

*1:”読んだ”という記憶と,灰色空の重苦しい雰囲気が瞼の奥隅に残っていた。

*2:展開に関係ある登場人物に限定しています