- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/02/26
- メディア: 単行本
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やはり面白かった。某所のレビュー等を見ると,評価がいろいろだが,
この小説の背景にある”躁鬱の薬の副作用による苦痛?*1”を想像した
り思い出す人には,”共感度”が増すに違いない。
福岡の病院から,脱走した二人。女子大生と会社員。
女子大生が,ややヘタレの会社員と彼の車で,本州でなく,
九州を南へ南へと走って行く。
ニュースや新聞に捜索願が載るような記述は無いが,
そこは,それぞれの読者にお任せなのだろう,いや,主人公の女子大生・
花ちゃんの頭の中を駆けめぐる”追われている”という声と,
”捕まったら,またあの薬の苦痛に埋め込まれる”という想いが
道を先へ先へと進めて行く*2。
会社員は,名古屋から抜け出て,東京を崇拝する・なごやん。
名古屋弁を使わないよう意識している。何度も「やっぱり病院へ帰ろう」
という辺りは,「男の方が女々しい」と広言していた,天才・上岡龍太郎*3を思い出させてくれた。
途中,律儀にも川で洗濯していて流されたり,車のクーラーが
壊れたりとハプニングもあるが,日常生活なら”ちっぽけだが鬱陶しい”
ハプニングなのが面白い。
男と女がいながら,情交に発展しないのが”絲山節”なのかな。
くわえて,男が弱々しい。そういう,絲山さんの作風が好きな方には,
特にオススメ*4。
次は,何の世界に浸ろうか・・・。
このジメジメの中では,シムノンのメグレ警視が読みたくなる・・。