magurit’s blog

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府民をまた煽り騙すのか?

 2010.05.26 読売朝刊 12面「今日のノート」より

 魔術師の教え

   魔術師に教えを受けたという男が、
  燃えさかる石炭の火を金貨に変える。
   その輝きが、見ていた友人らの
  欲望をかき立てた。男もやがて
  欲にからめ取られ、金貨をせしめる
  ために秘法を使った瞬間、夢から覚
  める。
   芥川龍之介の短編『魔術』の一場
  面だ。〈進歩した催眠術〉と紹介さ
  れる魔術をとおして、人間の業を見
  つめて鋭い。
   大阪市役所がみなさんにかけて
  いる催眠術を解く」。応援演説でそ
  う訴えた大阪府橋下徹知事も、
  「秘法」に通じているのかもしれな
  い。自ら率いる地域政党大阪維新
  の会」が、大阪市議補選で初陣を飾
  った。
   掲げる旗は、府と市を再編する
  大阪都」構想だ。その実現への第
  一歩として擁立した新人は無名なが
  ら、既成政党の候補に大差をつけた。
   既得権益の維持に走る市役所を
  「ぶっ壊す」という知事の話法で、
  眠りから覚めた有権者も確かにいる
  のだろう。
   知事は大阪都構想への期待も感じ
  取った様子だが、それはどうか。
  区長公選制を敷くという構想の具体
  像が見えない。行政効率がどれだけ
  高まるかも不確かだ。何より議論が
  深まっていない。
   小説の魔術師は「まず欲を捨てる
  ことです」と男を論す。知事も、
  虚心坦懐に、異論に耳を傾ける姿勢
  が大切だ。
   性急、強引という秘法で市を解体し、
  都に塗り替えようとするなら、温めた
  構想も、夢と消えてしまうことだろう。

 論説委員 上田恭規

  一事が万事だよ。