- 作者: 中山可穂
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/09/18
- メディア: 単行本
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最初の短編「隅田川」。
冒頭の一文。
掃き溜めのような街の底で、わたしは輝くけものを見た。
この一行を読み終えた瞬間。
思わず,フーッと溜息をついていた。
凄い,さすが・・・。
どんどん,頁を繰っていた手が,字音を辿っていた目が止まった。
『アレ?
なんだか,変。
これは・・・,なにが違うと感じさせるのだろう・・・?』
「隅田川」を読み終えて,本を閉じた。
その時,頭の奥が真っ暗,いや黒い段幕が降りてくるような,
無味無臭なゾッとするような不安感が押し寄せてきた。
仕上げ用のサンドペーパーを舐めたらこんな味がするのかもしれない。
そう,電気抵抗が焦げるような・・・。
『自分の調子がオカシイのかもしれない。暫く様子を見よう』と思う。
『ケッヘル』だけ読んでいないのでなんとも言えないが,
『弱法師』とは,匂いが違う。
『サイゴン・タンゴ・カフェ』とも,少し違う。
生きてきた愛に捧げられた死ではなく,
”死の為の死”の匂いが漂うというのは大げさかな。
能の「隅田川」について調べてみることにする。
http://www009.upp.so-net.ne.jp/keio-kanze/katudo/2006/shinkan_noh/arasuji.htm
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(「隅田川」のあらすじ)
相当,切ない哀れ滲む話なのですね「隅田川」は。
息子の亡霊が現れなくとも,悲しみは伝わるのに・・・,
亡霊が現れ,声は交わせども,亡霊は,母の身体をすり抜けていく。
「隅田川」というのは,短編では勿体ないというか,語り切れないのではないか。
しばらく,続きは読めない,読むのが怖い気分です。 (付記09.09.24)