magurit’s blog

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『悲恋(エレジー)』を・・・

 

悲歌  エレジー

悲歌 エレジー

 活字が追えるようになってきたので手に取った。
 最初の短編「隅田川」。
 冒頭の一文。

  掃き溜めのような街の底で、わたしは輝くけものを見た。

 この一行を読み終えた瞬間。
 思わず,フーッと溜息をついていた。
 凄い,さすが・・・。

 どんどん,頁を繰っていた手が,字音を辿っていた目が止まった。
 『アレ?
  なんだか,変。
  これは・・・,なにが違うと感じさせるのだろう・・・?』
 「隅田川」を読み終えて,本を閉じた。
 その時,頭の奥が真っ暗,いや黒い段幕が降りてくるような,
 無味無臭なゾッとするような不安感が押し寄せてきた。
 仕上げ用のサンドペーパーを舐めたらこんな味がするのかもしれない。
 そう,電気抵抗が焦げるような・・・。

 『自分の調子がオカシイのかもしれない。暫く様子を見よう』と思う。

 『ケッヘル』だけ読んでいないのでなんとも言えないが,
 『弱法師』とは,匂いが違う。
 『サイゴン・タンゴ・カフェ』とも,少し違う。
 生きてきた愛に捧げられた死ではなく,
 ”死の為の死”の匂いが漂うというのは大げさかな。
 能の「隅田川」について調べてみることにする。
  
 http://www009.upp.so-net.ne.jp/keio-kanze/katudo/2006/shinkan_noh/arasuji.htm
  ↑   ↑
 (「隅田川」のあらすじ)

 相当,切ない哀れ滲む話なのですね「隅田川」は。
 息子の亡霊が現れなくとも,悲しみは伝わるのに・・・,
 亡霊が現れ,声は交わせども,亡霊は,母の身体をすり抜けていく。

 「隅田川」というのは,短編では勿体ないというか,語り切れないのではないか。
 しばらく,続きは読めない,読むのが怖い気分です。 (付記09.09.24)