南方熊楠に興味関心が偏ったのは,もう二昔前になろうか。
真夏に近い大潮の日曜をカレンダーで探して,特急とタクシーを
駆って,日帰りで白浜の先端に海胆を採集に行った頃のこと。
某大学の水族館の研究所の裏にある海岸には,手のひらより
小さいサイズのムラサキウニ,アカウニ,シロウニ,バフンウニ,
そして,ガンガゼが沢山岩場に現れる。
およそ2時間の間に,ムラサキウニを20個ばかり集める。
二つのバケツの底には,氷の塊を入れ,海水で濡らした新聞を敷き,
網に入った海栗を入れ,上からも新聞を被せドボドボと海水を
かける。
帰りの電車に合わせて予約したタクシーが来る迄の間,岩場と潮溜まり*1
で,鮮やかな赤・青・黄色のイバラカンザシが枝?をサッと
引っこめるのをボーッと眺めていた。時折現れる,熱帯性の魚や
ゴンズイダマに1人歓声を上げていた。
それでも,時間があまった時に,海岸のそばにある小山を駆け上がった
そこは,南方熊楠の記念館か何かだったようだ。「南方熊楠」の文字が
瞼に残った。家に帰った後,その名前が何度も近寄ってきた。
なかでも,「粘菌」の研究で,明治天皇にキャラメル箱に標本を入れて
献上した話は,彼の端正な肖像画からは想像もできなかった。
さて,この本に登場する数々の「粘菌」のカラー写真は,美しくも怪しい。
以前,某国営放送で見た「粘菌」の生活史の映像が甦ってきた。
さらに,「迷路を解く変形菌」「粘菌がクモ型ロボットを操縦する」
等の科学研究の紹介や「『風の谷のナウシカ』と」粘菌」も面白い。
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*1:タイドプールともいう。よく子供向けの図鑑には「潮溜まりの生き物」という頁があったが子どもの頃住んでいた瀬戸内には潮溜まり等は皆目見られず・・・。静岡以東の太平洋側の海岸に現れることを後日知り,悔しがったものである