magurit’s blog

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「朝日新聞 土曜版より」


↑「フィンランドのベリーの切手」

   女性の棚 男性の棚 
       山崎ナオコーラ
  人々を二つに分けて捉えるのって,
 わかりやすい。上流下流,勝ち負け,
 それから男性女性など。でも,「わ
 かりやすさ」のために何かをすっ飛
 ばして人を認識しているような,         
 ガサガサした気分になるときがある。
  初めて行った街で本屋に寄った。私が以前アルバイトをして
 いた書店の別店舗だ。すると知っている店員さんがいた。雑誌
 の補充をしている。目が合う。
  「いやー,先生じゃないですかー」
  と,からかってくるMさんは30代中頃の男の人だ。ふくよ
 かな体つきで,コミカルに喋る。(中略)
  「あのー,素朴な質問をしてもいいですか?」
  「いいですよ」
  「文芸の棚は,どうして女性作家と男性作家の棚に分かれて
 いるんですか?どこの書店さんでも,そうなんですよね」
  するとMさんは,文芸担当の店員さんを紹介してくれた。
  「特別な意味はないんです。探しやすいから,です」
  と,彼女は言う。そのあと,文庫を担当なさってる女性の方
 も説明してくださった。
  「文庫は,出版社ごとに分けて並べてあるじゃない?でも
 文芸の棚はそうじゃないから,まとめてアイウエオ順にすると
 多すぎて混乱してしまいます」
  もっともだ。でも私は言う。
  「小説って,作家の性別は関係ないんじゃないかと私は思っ
 たんです。あと性別がはっきりしない作家さんもいらっしゃる
 んじゃないかと思ったんです」
  性別を,たった2種類に分けることに,抵抗を感じてきた。
  でも社会の中では,いろいろな考え方を分けたりまとめたり
 しないと皆で生きていけない。
  ともかくもカテゴライズは,あくまでもわかりやすさのため
 にすることだ。レッテル貼りとは違うから,混同しないことが
 大事なのだな。 
 2006.4.29 朝日新聞・土曜版be「指先から,ソーダ」より引用