magurit’s blog

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観たときが,ちょうど見ごろやってんなぁ。

寝ずの番

   通夜の際に、故人を寂しがらせないために傍で一晩中起きている事。(wikipedia

寝ずの番 [DVD]

寝ずの番 [DVD]

 映画は,師匠,次いで”一番弟子”,”師匠の連れ合い”の通夜の席。
 それぞれの艶めいた話・下ネタな話を弟子たちが語り,騒ぐ話です。
 
  伊丹十三氏の「お葬式」を連想されるかもしれませんが,”儀式での秘かな笑い”ではなく,

”師匠と弟子”というアウトローな繋がりを堪能できます。

  六代目笑福亭松鶴の逸話*1が使われているようです。

正直,期待してなかったのです*2

  ところが,・・・

病院のベッドに立って,スカートを捲り上げるシーンが視界の端に入って,

「あれ,今の何?」

 と,最初から見直したら*3,すっかり取り込まれていました。
 死に際の師匠の一言を「●●*4が見たい」と聞いた一番弟子(笹野高史)が,
 中井貴一に「お前の嫁を説得せい!」。
 恐妻に「やっぱり若こうて,美人のやないと・・・」と煽てると
 「ヨッシャ!私のでよかったら」と男気を見せる木村佳乃
 病室では,面倒やからとその場で片足ずつ脱ぐのですが,じつにいやらしい。
 中井貴一も興奮して・・・。一仕事済ませてから,病院へ駆けつけます。
 師匠に見せたあと,抱き合い絆を確かめる二人。
 一番弟子に「そとが見たいと言うたんや!アホッ!」

”カオリフェ”ってご存知ですか?

 「けど,僕の話で感動しくれはったことがあったな」と中井貴一
 「カオリフェって何や?」と焼肉屋で尋ねられます。
 「”フェ”って”刺身”のことです。
  イカフェは,イカの刺身。
  ヒントいきましょか?
  二字です。魚です。
  変わった形をしてます。
  僕の青春の思い出です。」

 ”青春の思い出”とは,
 「▲△*5の●●は,人の●●とよう似てるんですわ。
  初体験の相手は,▲△と決めたんですわ。
  18才の時,船をチャーターして,釣って・・・。」 

 ”2mの▲△*6”も,ヌメヌメッとした感じが,良く出来てました。

 「今考えると▲△は冷たいです。」
 部屋の外で,

「うちは,▲△と姉妹かぁ」

 落語「らくだ」でお馴染みの

”死人のカンカン踊り*7

 売れない息子(岸辺一徳)が死体に語りかけます。
 「・・・死人のカンカン踊りなるものが出てくる。あれを実際にやって演じるのと
  やらんと演じるのでは,話がちごうてくる。そうやろ?
  ワシはこの際,このボケ親父に,じかに落語の神髄というやつを教えてもらおう思うんや。
  橋鶴の『らくだ』,『らくだ』といえば橋鶴,死人のカンカン踊りや!」と,
 捲し立てるシーンは,ジーンときます*8

上方演芸ファンタジーですねぇ!

 (第2部の)一番弟子の通夜,お焼香シーン。

 特別出演の桂三枝,笑福亭釣瓶の顔が引きつっていたのは,
 やはり,「死人でカンカン踊り」の件があったから(笑)?
 師匠の息子に「あんたは,ヤカンが大きいから,なかなか湯が沸騰せんのや」と
 励ます話などは,下手なタレントの内輪ネタよりも,
 品があるように思うのですがいかがでしょうか。

おれの心は とたんの屋根よ かわらないのを 見てほしい♪

 (第3部は)師匠の連れ合いの通夜の席。

 昔,富司純子を師匠と張り合った元社長が現れ,三味線を借りて唄います。

 「はあーー,ちんぽちんぽといばるなちんぽ ちんぽおめこの爪楊枝♪」

 ここから「ちょんこ節」の合戦が始まり,
 中井貴一が,張りのある声で返します。

 「はあーー,おめこおめこといばるなおめこ おめこちんぽの植木鉢♪」

 清楚な声が,歌詞の卑猥さを消してしまいます。

 原作に無い唄が続々と歌われ,通夜も佳境を迎えていきます。
 「鳩ぽっぽ」「軍艦マーチ」「汽車ぽっぽ」の替え(春)歌を
 あの人やこの人が,朗々と唄う姿は,さわやかです。

 とにかく芸達者が集まった映画です。
 アッという間に,「Don't Worry,Be Happy(Bobby McFerrin)」のエンディング・テーマが流れ,
 110分が過ぎていました。

 DVDには,特典映像としてオーディオコメンタリーが収録されています。
 監督,出演者が撮影秘話を映像に合わせて語ってくれ,”一粒で二度”たのしめます。
 大阪の話なのに,ロケ地のほとんどが東京で,
 エンディングを入れて3カ所しかないと驚かせてくれました。
 気づけば,さらに110分が過ぎておりました。

 中島らも原作の映画化。マキノ雅彦・第一回監督作品。

公開時は「R-15」指定,文化庁推薦(笑)。

 

寝ずの番 (角川文庫)

寝ずの番 (角川文庫)

 (最新改稿09.08.11)

*1:師匠の連れ合いをアーちゃんと劇中で呼んでますが,釣瓶・上岡の「パペポテレビ」で釣瓶が松鶴の連れ合いをそう呼んでいた

*2:発売後,熟成してました

*3:イヤラシサが微塵もなかったので,何をしてるんだろう?と純粋に思いました。

*4:京都では,おそそ,淡路ではおちゃこ,関西はおめこ,関東はおまんこ

*5:エイ

*6:特殊メイクの江川悦子さん作

*7:「カンカンノォ・・・」というアレです

*8:上方落語協会の年輩の師匠の中には,師匠の死体でかんかん踊りは,赦せないと怒った人もいたとか