Arガスが試料と混ざり合い
プラズマ炎となって轟音を揚げている。
時折,プラズマ炎の中心が赤く染まる。
濃いコバルトガラスを通して見える紅。
Fe,Pb,Znの定量なので,炎色が
見られたからといって慌てることはない。
案の定,試料採取の場所を確認すると井戸水だった。
さらに,他の分析項目を見ると,塩素イオンが他の
試料より高めの数値。
見慣れてしまえば,ほとんど変化など感じられない
炎だが,ほんの一瞬の変化を見つけると,制御され,
決められた内容しか気づくことができない分析装置に
勝った気がするのは,”モダンタイムス”世代だからだろうか。
プラズマ炎によって,瞬間的に消滅する数mlの水の中には,
人々の生活が刻む音が風葬されていくように思えた。