帯の
『「本当のあなた」は存在するのか?』
という文言に見事にひっかかってしまった。
むちゃくちゃ悔しい!!
『ブレード・ランナー』に浸っていた時間が少々長すぎたようだ。
まさか,
中公新書まで,堕落していたとは・・・。
せめて,中公新書でなく,二番手,三番手の新書なら,手にしなかった・・・orz
もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく (中公新書)
- 作者: 竹内薫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/12/01
- メディア: 新書
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「・・・じゃないですか」,「・・・ですよね?」,「ある意味,」「結構おもしろい」に辟易。
1,2頁ごとに,【思考実験】と銘打って,条件提示がなされるが,
「あ〜でもない,こ〜でもない」と推理するでもなく,
ポンポンと答えを書いてしまう,いや,押し付ける。
これは,日本の理科の教科書の悪い処,そのままの姿。
表紙・表題の下に書かれた「思考実験が判断力をみがく」なんてありますが,
「嗜好押し付け話」の間違いでは?
その昔,”パペポTV*1”で,上岡氏が釣瓶氏に「ないことで話するな」というツッコミを
入れていたが,そういうツッコミを入れるレベルにもない。
”科学哲学・物理学”を専攻し理学博士という肩書きを持つと奥付にあるが・・・。
啓蒙としての「思考実験」をテーマにして,入門書のツモリなのかもしれないが,
いかにもヤッツケ仕事の感が否めない
あまりにも,軽率すぎる。
科学者は,こういった押し付けや断定を嫌うはず。
仮説なら条件提示をして実験をするなり,
実験結果が早急に出ないなら,考えられる結果に対する推論を示すのが普通だろう。
特に,第5章の「仮面をつけたら」では,思考実験どころか,
自分が関わったバラエティ番組での出演者の賛辞まで登場する始末。
帯裏には,
・・・「試行実験」=脳内シミュレーションは,刺激的なゲームであると同時に,
科学的思考法を身につける絶好のトレーニングだ。「もしも」の世界に遊びながら,
思考実験のプロセスを味わおう<<
ともある。
「トレーニング」になるような文章配列はどこにも見られない。
先にも書いたように,思いつきの【思考実験】という提示のあと,
いきなり答えだ。中には,読者をバカにして,「これは難しいから答えを書きましょう」
という処もある。クイズ番組と勘違いしているのだろうか?
さらに「思考実験のプロセス」はどこに示されているというのか?
プラトンの『国家』が好きなのは勝手だが,
「思考実験」がメインテーマで,「『国家』を読め,『国家』は大事だ」と
唱えるこのズレた感覚。
肩書きによる差別を書くくだりでも,幾つかの文学賞にノミネートされたことを
自慢して,自分を大きく見せたいだけなのだろう。この本で,キワモノとして
面白がられてノミネートされたのだろうしか思えない。
この著者には,
オーソリティとしての猛省をお願いしたい。
さらに,中公新書の編集者は,恥ずかしくないのだろうか?
もちろん,本が売れればそれでいいのでしょうがね。
あぁ,それにしても,もう少しジックリ,立ち読みすればよかった。