magurit’s blog

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『償い』

 

償い (幻冬舎文庫)

償い (幻冬舎文庫)

  職場の昼休みに本を読んでいるのを見かけた同僚が貸してくれた本。
 主治医として関わった患者を,同僚の医療ミスで亡くなった為責任をとった
 主人公日高。ホームレスになり彷徨う街で連続殺人が起こる。正義感で,
 放火を通報した為,重要参考人,容疑者として拘留され,結果的に警察の
 イヌとして犯人を追うことになる。
  
  人から本を借りることは滅多にないのだが,近々,退職予定の人なので
 黙って預かった。その前の週には,ガッツ石松の発言集を渡されて,拒否も
 しにくいので,短い昼休みに大急ぎで読んで返したのだが,「新聞の広告が
 面白そうだったから,ただ,7頁で停まってるので先に読んでくれませんか」と
 言われて少々困惑したのも事実。資料を探して人に借りることはあっても,
 「オススメ」と小説を押し付けられることはあっても,自分の琴線に触れた
 本を読む前に人に渡すって・・・。読書家でもなさそうなので,たぶん,
 私とコミュニケーションを取りたかったのだろう。
  
  主人公がホームレスというのが,退職する前から,再就職する迄,ずっと
 不安で苦しんでいた自分自身に振り返らされて,身につまされれる様な
 ジトーッとした暗さを感じて,最初は辛かった。

  図書館で出会った少年が,実は日高が1ε年前に救ったと気づくまでに
 少年から革ジャンを貰う等,登場頻度が上がって,”もう一方の主人公*1”だ
 早々に気づかされるので,斜め読みで充分ストーリーを追えてしまう。

  日高に関わる中年の刑事,署長,冤罪を着せられた男,その妻,殺された作家,
 火事で焼け出されて生き残った少年,日高と付き合いのあった女医,そして,
 自殺した妻。全てに,暗い過去と辛い現実があるのだが,それを深く書ききるでもなく,
 薄っぺらい関連性だけで結末へ持っていくだけなので,最初の胸を締め付けら
 れる様な感じもアッという間に消えた。もっと,ジクジクと苦しめてくれるのかと
 思っていたのだが・・・。裏表紙に書かれた粗筋がそのまま結末だったし,
 各章の見出しだけを追っていってもほぼ内容がわかってしまう。

なんで,50万部も売れてるのだろう?

  真保裕一の『奇跡の人』を読んだときの,エンディングまで続く胸苦しさを
 期待?,いや予想したのだが思いっきりハズレ。軽すぎます。(2008.6.3)
  

奇跡の人

奇跡の人

*1:犯人