- 作者: 矢口敦子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 文庫
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主治医として関わった患者を,同僚の医療ミスで亡くなった為責任をとった
主人公日高。ホームレスになり彷徨う街で連続殺人が起こる。正義感で,
放火を通報した為,重要参考人,容疑者として拘留され,結果的に警察の
イヌとして犯人を追うことになる。
人から本を借りることは滅多にないのだが,近々,退職予定の人なので
黙って預かった。その前の週には,ガッツ石松の発言集を渡されて,拒否も
しにくいので,短い昼休みに大急ぎで読んで返したのだが,「新聞の広告が
面白そうだったから,ただ,7頁で停まってるので先に読んでくれませんか」と
言われて少々困惑したのも事実。資料を探して人に借りることはあっても,
「オススメ」と小説を押し付けられることはあっても,自分の琴線に触れた
本を読む前に人に渡すって・・・。読書家でもなさそうなので,たぶん,
私とコミュニケーションを取りたかったのだろう。
主人公がホームレスというのが,退職する前から,再就職する迄,ずっと
不安で苦しんでいた自分自身に振り返らされて,身につまされれる様な
ジトーッとした暗さを感じて,最初は辛かった。
図書館で出会った少年が,実は日高が1ε年前に救ったと気づくまでに
少年から革ジャンを貰う等,登場頻度が上がって,”もう一方の主人公*1”だ
早々に気づかされるので,斜め読みで充分ストーリーを追えてしまう。
日高に関わる中年の刑事,署長,冤罪を着せられた男,その妻,殺された作家,
火事で焼け出されて生き残った少年,日高と付き合いのあった女医,そして,
自殺した妻。全てに,暗い過去と辛い現実があるのだが,それを深く書ききるでもなく,
薄っぺらい関連性だけで結末へ持っていくだけなので,最初の胸を締め付けら
れる様な感じもアッという間に消えた。もっと,ジクジクと苦しめてくれるのかと
思っていたのだが・・・。裏表紙に書かれた粗筋がそのまま結末だったし,
各章の見出しだけを追っていってもほぼ内容がわかってしまう。
なんで,50万部も売れてるのだろう?
真保裕一の『奇跡の人』を読んだときの,エンディングまで続く胸苦しさを
期待?,いや予想したのだが思いっきりハズレ。軽すぎます。(2008.6.3)
- 作者: 真保裕一
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1997/05
- メディア: 単行本
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*1:犯人